2024 年 1 月の法改正により、電子取引データの保存が義務化されて 1 年6ヶ月が経過しました。大きな制度改正にも関らず、中小企業の 6 割以上が未対応という調査結果もあります。一体、なぜ進まないのでしょうか?
①コストと人手の壁
多くの中小企業では、システム導入に必要な初期費用や月額コストが大きな負担となっています。加えて、経理担当者が 1 人だけというような現場では、日々の業務に追われて改正への対応に時間を割る余裕がないのが実情です。
②複雑すぎるルール
電子帳簿保存法は、保存要件として「真実性の確保」や「可視性の確保」等を求めており、専門用語が多く、制度の全体像がつかみにくいという声が上がっています。
「とりあえず紙に印刷しておけばいいんでしょう?」という誤解、制度違反につながるリスクもあります。
③社内体制の限界
新たなルールに対応するには、業務フローの見直しや社内教育が必要です。しかし、それを担う体制が整っておらず、「どこから手をつけていいか分からない」と手つかずのままなっている企業も多いです。
踏み切れない理由としては大きく分けて 3 点あげられます。これらはすべて、経営資源の限界や組織体制の課題と密接に関係しています。考え方によっては、単なる「法対応」ではなく、経営の効率化とリスク管理を同時にできるチャンスでもあります。紙の書類管理にかかる印刷代・保管スペース・人件費は、見えにくい固定費です。電子化によって、経理業務のスピードと精度が向上し、本来注力すべき業務に時間を割けるようになるかもしれません。DX への第一歩。テレワークや柔軟な働き方にもつながり、若手人材定着や採用にも好影響を与えるかもしれません。自社に合った対応レベルを見極め「やらされる対応」ではなく、「選んで進める改善」として前向きに取り組んでいきましょう。
辻 直英